オーストラリアの大腸がん検査について
オーストラリアでは、50歳を越えると2年ごとに大腸がんの検査キットが送られてきます。
政府のウェブサイトによると、国民だけではなくて、メディケアカードを持っている永住者にもキットが届くようですね。
You You are eligible to do the screening test every 2 years if you:
https://www.health.gov.au/our-work/national-bowel-cancer-screening-program
- are between 50 and 74
- have a Medicare card and entitlement type of either Australian citizen or permanent migrant or are registered as a Department of Veteran Affairs customer
- have an Australian mailing address.
何ヶ月か前に、僕の家にも郵便でキットが届けられました。

指示通りにサンプル(自分のウXチですが)を採って送り返すと、何週間か経って手紙が戻ってきました。
なんとなんと、「ポジティブ」という有り難くない結果でした。
つまり、ウXチの中から血が検出されてしまったということですね。
また政府のウェブサイトで調べたら、検査をした人のうち、7%程度がポジティブになるそう…って、オレはその7%なのか。
え~、マジか…。至って健康体なので、大腸がん…という可能性は低いと思うけど、気になるわ。
ということで、精密検査をしてね!ということになりました。
かかりつけ医に行って紹介状をもらう
さてこの場合の精密検査というのは、内視鏡を身体の中に入れてチェックする、というそれなりに大掛かりなものになります。でもいきなり病院に行くことはオーストラリアではできません。
ここがちょっと面倒くさいのですが、まずはかかりつけ医(こちらではGP、General Practionerという)に行って、病院への紹介をしてもらう必要があります。つまり二段階になっているんですね。
いつも行くGPに行き、簡単な問診をして、
「まあ、検査の結果癌になる確率はとても低いから(30人に1人の割合らしい)そんなに気にしなくても大丈夫!」
というあまり当てにならない励ましの言葉をもらい、それでも精密検査の手続きをしてもらうことになりました。
プライベートか、パブリックか?
このような検査をする場合は病院に行くのですが、私立病院(プライベート)か、公立病院(パブリック)に行くかという選択肢があります。
プライベートだと待ち時間は少ないけど、費用がかかります。ちなみに僕の場合、任意で加入している保険を使っても700ドルと言われたので、迷うことなくパブリックで!となりました。
パブリックの場合、検査は無料ですが、待ち時間がかなり掛かるかも…ということでした。この国、手術などでも空きが出るまではかなり待つことが多いので、のっぴきならない人は困るでしょうが、まあ今回のケースはそんなにじたばたしてもしょうがないし…とのんびり構えていたところ、1か月ほど先に検査だよ!と病院から電話が来ました。意外と早かった!
やはりいくら大丈夫そう、と思っていても頭の隅には引っかかっているので、さっさと検査して白黒つけてもらった方がいいですよね。
2日前からの準備
しばらくすると病院から、検査への準備、当日の段取りなどが書かれた手紙が来ました。
内視鏡検査ということなので、お腹の中をキレイにする必要があるので、二日前から食べ物制限が始まります。
その前の晩は、最後の晩餐っていうわけでもないけど、パブに行ってステーキをがっつり食べました。

さて、翌日からは白い食べ物ばかりしか食べられません。病院から来た手紙によると、
- 白米
- パスタ
- 白パン
- 鶏胸肉(皮なし)
- 白身魚
- じゃがいも
- ライスクラッカー(色のついていないやつ)
くらいしか食べられません。しかも食物繊維も取ってはダメらしく、野菜や果物で食べられるのは、皮をむいたジャガイモくらい。白米(ごはん)を食べていりゃなんとかなる日本人ならまだ耐えられる程度ですが、やはり味気なかったですね。
それからこのご時世なので、病院に行く24時間前にコロナのRAT検査をする必要がありました。自宅で検査キットを使ってやればいいので楽ですが、陰性結果が出てるキット(線が1本だけ出てる)と、自分の身分証明書が一緒になった写真を撮って下さい、とのこと。
全然健康体なのでまず問題ないだろうな~、とは思うものの、やはり待っている間は少し気持ちがざわつきます。でも無事に陰性となったので写真をスマホで撮りました。
検査前日の午後5時からは、固形物は食べられなくなります。水、スポーツドリンク、コーヒー紅茶などを飲んで気を紛らわせました。
そして午後7時には、Mobiprepという薬を1リットル飲まなくてはいけません。

これって要は下剤なんですかね?
オレンジ風味になっていて、そんなに不味い!というほどでもなかったですが、やはりビールならまだしも、水分を1リットルも飲むのはそれなりにしんどかったです。
飲んで1-2時間ほど経つと、おお!
トイレに駆け込みました…
この後はお腹がずっとゴロゴロするというか、膨満感がある感じで、とにかく不快でしたね~。
この後もトイレに何回も行き、あまり良く眠れなかったです。
いよいよ検査だ
僕の検査は朝7時半の受付だったので、午前5時に起床。
2回めのMoviprepを飲む…ごくごく。う、まずい。
最後にトイレに行くが、どうやら腸の中は空っぽになっているようで一安心。こんなに気持ち悪い思いをしてるのに、残留物が多かったので再検査!とかなったら嫌だもんなあ…。
検査をする病院は、我が家から徒歩5分という近さなので助かりました。
病院は、こんな朝早いのにそれなりに人は多かったですね。
もう街なかではマスクをしているひとはほとんどいないシドニーですが、さすがに病院内はマスク着用義務があります。
受付をして、しばらく待つと看護師に呼ばれ、問診を受けました。
生年月日、アレルギーの有無、あとは、メガネまたはコンタクトをしているか?とか、歯に詰め物がないか?なんて質問もされました。これは、検査する機器に影響するからなのでしょうか?
昨日撮った、RAT検査の陰性写真もここで提示。
それが終わると、小さなブースに案内され、着替えをするように指示されました。パンツ一丁の上から、簡単なガウンを着て、頭にはネットをかぶる。
なんか精密工場で働くデキの悪い労働者みたいだな~、と呑気にセルフィー。自分の服や私物は全部まとめてビニール袋に放り込みました。これは検査の後に返してくれるとのこと。麻酔されたら意識なくなるから、これは大事ですね。

着替え終わったら、ベッドがズラッと並んだ待機所のようなところへ案内され、ベッドに横たわる。乾燥機から出したてのような暖かいブランケットを渡され、ガウン一枚で少し身体が冷えていたので助かりました。
次は、麻酔担当の看護師がやって来ました。
アジア系のちゃきちゃきした若い女性で、「この後全身麻酔をかけるから、もう次に起きた時には全て終わってるわよ!あっという間だから!」
と、めちゃくちゃフレンドリーに言うので、安心感が出るというか、さすがになんでもNo Worriesの国だなあ…。そしてこういう場所で、看護師の人は自分の名前をちゃんと名乗るんですよね。これもやはりオーストラリアっぽいのかな。
ここでもまた同じような問診を受け、点滴を入れるための針を手の甲に刺されました。
さて、最後に真打ち、担当医が登場。やたらと体格のいいオージードクター、ざっくばらんに検査の手順を説明し、ハイ、ここにサインしてね~、と検査の書類にサインを求める。
こんなレギュラーな検査でも、僕の名前が入ったファイルにはすでに沢山の書類が挟まれていて、やはり医療というのは手間がかかるんだなあ…と感じ入りました。
麻酔はまだなのですが、昨日からほぼ眠ってなかったのでうとうとしていると、看護師と先の医者が戻ってきて、いざ!
ベッド両端のガードをガチャン!と上げ、二人がかりでベッドをゴロゴロと動かし始めました。
「うーむ、これは映画のいちシーンのようではないの、オレは生きて帰ってこれるのだろうか…」
まあそれは大げさだけど、やはり少し緊張しました。
狭い廊下を何回か曲がって検査室に入りました。複雑そうな機器が並び、大きなモニターが正面に。
先程のフレンドリー麻酔担当の看護師と、そのアシスタントがスタンバイしていて、
「これが終わったら何食べる予定?」とか聞いてくる。
「うーん、2日前から大したものを食べてないので、ハンバーガーとか食べたいっすよね」
こういう無駄話をするのは、オーストラリア人の特技で、リラックスするので助かるよな…。
それでもさすがプロ、テキパキと行程は進み、腕に血圧を測るバンドが巻かれ、指には酸素濃度を測る洗濯バサミのようなやつが挟まれ、なにやらすごいことになってるなあ…計測機器が音を立ててるし。
そして医師が勢ぞろいし、手の甲に点滴の管が入り、口にはマウスピースをくわえさせられ、鼻には気体(麻酔ガス?)の入るノズルが着用され、
「ハイ、左側を下にして横になって…そうそう」と言われ、
「あ、なんか変な匂いだな…」とガスを嗅いでいると、記憶が…。
検査後
検査中の記憶は、全くなし!
いや、いろんな機器の音を聞いていたような気がするが、気のせいかなあ…。
「ハイ、終わったよ~」と誰かが声をかけてくれ、我に返りました。
まだ頭がとてもぼんやりしていましたが、ベッドから半身を起こして、着替えをしました。
そこから別の待合室に行ったのですが、まだかなりフラフラしていたので看護師さんに腕を支えてもらって歩かないといけませんでした。
ここで、サンドイッチと飲み物のオファーがあったので、ハムとチーズのサンドイッチと紅茶をお願いしました。
なぜかとても身体が冷え切っていて、寒かったです。
サンドイッチは、パックに入ったできあいだったし、紅茶も普通のティーバッグだったけど、久々のソリッドな食べ物だったので、ああ美味しい…としみじみと味わいながらいただきました。
ここで、必殺お迎え人に、終わったよメールを送りました。
全身麻酔の検査だったので、その後車を運転することは違法ですし、歩いて帰るのも危険なので、迎えの人を準備(?)しなければ検査をさせてもらえません。
僕のような独り者は、これがちと大変でした。平日だと働いている人が多いですしね。無理を聞いてくれた友だちには感謝です。
ただ、まだ頭がヘンなので、簡単なメッセージを打つのにもめちゃくちゃ打ち間違いが多くて時間がかかりました。
検査にかかった時間ですが、もちろん記憶が飛んでるので自分では分からないですが、もらった検査レポートを見ると、検査自体は所要1時間程度で9:30頃に終わったようで、友だちにメッセージを送ったのが10:30頃でした。
待っている間も、安全に帰宅出来るかを確認するために血圧を測りましたが、まだ検査前より低い状態でした。
ちょっとそこら辺を歩いてねと言われ、トイレに行ったりすると少しずつ感覚が戻って来て、また測った血圧もまだ少し低めでしたが、友だちも病院に着いたらしいので、また受付にもどり、病院を後にしました。
近くのカフェでコーヒーとサラダを食べ(さすがにハンバーガーを食べるまで体力は回復してなかったです)、あ~、まともなヒトに戻ったなあ、としみじみしました。


結果
さて検査結果は、腸内はクリアーで問題なし!でした。検査結果をプリントアウトしたのを渡してくれ、それを見ると内視鏡は、口からのと下からのと2回やっていて、それなりに手間がかかっているのだなあと思いました。
腸内の写真も添付されていて、きれいなピンク色で美味しそう…じゃなくて、健康そうでした。
結果がわかってしまうと、ホラ、そうに決まってるじゃん!と思いましたが、自覚症状がない場合だってあるのでやはりホッとしました。
これでビールが飲める!ステーキが食べられる!なんて…(適度にしましょうね)。
そして翌日、病院から確認の電話が来ました。こちらは全く問題がなかったので、「調子どう~?」「あ、大丈夫っす!」「あ~そう、じゃあね~」と、至って簡単なものでした。
それにしても、このような手間暇のかかる検査を無料でやってもらえるというのは、やはりありがたいです。この検査に携わった看護師や医師の数だって、指を折って数えると6-7名になりますものね。
皆さんにとってはいつもやってること、なのでしょうが、テキパキと作業を進める姿はやはりカッコいいなあ、と思いました。
というわけで無事に終わった検査ですが、これからも健康に気をつけなければなあ…という思いを新たにしました。
コメント