オーストラリアの国政選挙に初参加

オーストラリア

2022年5月21日は、オーストラリアの国政選挙の日でした。

僕はこの2月に国籍を取ったばかりの、ほやほやの「オージー」なんですが、3ヶ月もしないうちに選挙とは…。

特にコロナやロシアウクライナ情勢など混沌とした世界の中での選挙となるので、かなり大事なものになりそうです。

さて、豪州の選挙ってどうなんでしょう?

ざっと国会のおさらい

オーストラリアの国会は日本と似ていて、二院制が敷かれています。The House of Representatives は日本における衆議院、 The Senateは参議院、と考えれば大体あっています。

もちろん定期的に選挙があります。

A full federal election is conducted approximately once every three years on a date determined by the Governor-General, upon request by the Government. Typically, this involves the election of all House of Representatives members as well as half of the Senate.

要約すると、通常は3年おきにHouse of Representatives と、Senateの半数が選挙にかけられるそうです。

選挙は義務!

これは結構有名な話ですが、オーストラリアでは選挙は義務…なので行かないといけません。

行かないとどうなるのか、というと、罰金を取られます。

いくら取られるのかな…と調べたところ、まあそんなに高額ではありませんでした。初犯は$20で、リピートオフェンダーは$50取られるとのこと。

たださすがに義務化しているので、だれでも選挙ができるような配慮がされています。

期日前投票、郵便投票、海外からの投票、出張投票所…などなど。インターネット投票はまだ実施されておりません。

まあ、これなら選挙に行かざるをえないよなあ~、という感じです。

オーストラリアは多民族国家なので、選挙についての説明もいろいろな言語で用意されています。

Australian Electoral Commission のウェブサイトから

これは中国語バージョンですが、それ以外も「え、これはどこの国の言葉だろ?」と首をひねるような言語もあり、さすがだなあ、と思いました。

でも日本語はありませんでした。オーストラリアの国籍を取っている日本人の数が少ないからなんでしょうね。

投票のしかた

投票のしかたがややこしい、というのも有名です。

オーストラリアの場合、Preferential voting という投票方法を取っていて、簡単に言えば、誰か一人だけを選ぶのではなく、候補者に順位をつけて投票する、ということです。あ、これでも分かりにくいか…。両院、投票方法が少し異なっているので下に書いておきます。

House of Representatives

こちらの議院は、選挙区ごとに当選者を一人選ぶのですが、誰か一人を選ぶわけではなく、候補者全てに順番をつける必要があります。

つまり、自分がイチオシの候補者には1をつけ、それから順に2,3…と順位をつけていくわけです。

The Senate

これもややこしい!というのも、こちらの議院は、投票のしかたがなんと2通りあり、どちらかの方法に従って投票しなくてはいけないのです。

第一の方法は、政党を選ぶもの。自分のイチオシ政党から順に、最低でも6番まで番号を振る必要があります。実際の政党数はもっとあるので、最後まで番号を振ってもいいのですが、まあそこまでする必要はないようです。

第二の方法は、候補者を選ぶもの。Senateは、各州12名の議員を選ぶので、出馬している候補者を1から最低でも12まで番号を振る必要があります。

1から12なんて、野球の打順を決めるより多いじゃないの。覚えられんがな。

得票数の数え方

これがややこしい…最初読んだときは分からなかった、マジで。下にカウントの仕方を説明した画像を貼っておきましたので、読んでみて下さい!

Australian Electoral Commission のウェブサイトから

頑張って読んだところ、なんとか理解できた…と思います。ふ~、ややこしいね。

でも、自分が投票した候補者が落選したらもう自分の票は無駄になってしまう、というより、自分が第二、第三…に選んだ候補者にも自分の票が活かされる、というのは公平なシステムなのかな、と思いました。

まあ、投票者としてはそれほど深く考えずに番号を振ればいいのではないでしょうか。集計する人は大変そうですが、集計するプログラムをコンピューターで作ればそれほど大変ではないのかも。

そしていよいよ投票日!

さて、投票日。

これはいつも土曜日と決まっているようですが、期日前投票もかなり盛んなようで、前日の金曜日に投票所を通ったら、もう当日のような賑わいでした。

僕も最寄りの投票所へ。僕が行った場所は教会(の事務棟)でしたが、学校なども使われます。

けっこうな行列ができてました。さすが選挙が義務だけある。

まず迎えられるのは、数々の候補者、政党の看板と、その党のボランティア。

こんなチラシを配ってます。

先に述べた通り、オーストラリアの選挙では、候補者、政党に番号を振ります。

どの候補者、政党も、自分たちを1番にしてね!というのは当たり前として、その後の番号をどう振ってもらうかで自分のライバルの運命が決まるので、これはけっこう大事な作戦なんですよね。いろいろな政党の番号の振り方例を見ていると、その作戦が垣間見えるような…。

これをふむふむ…と読んでると列は徐々に進み、ついに投票所に入りました。

さて、建物の中に入ると、まずは受付に行って、3つの質問をされます。

Question 1: ‘What is your full name?’

This enables the polling official to look up your name on the certified list which is a copy of the electoral roll for that division. If your name is on the certified list, you will be asked the next question.

Question 2: ‘Where do you live?’

If the address given is the same as that shown on the certified list you will be asked the next question.

Question 3: ‘Have you voted before in THIS election?’

If you have not voted before in this election, you will be issued with ballot papers – one for the House of Representatives and one for the Senate.
If you have voted, you are not entitled to cast another vote and will not be issued with ballot papers.

Australian Electoral Commission のウェブサイトより

自分の名前を述べると、電話帳のような分厚い投票人名簿みたいなのから名前を探し、投票用紙を渡されます。

身分証明書などを提示しないといけないのかな、と思いましたが、なにもありませんでした。そうか、IDがない人もいるので、そういった人でも投票できるようにしないといけないからなあ。

オーストラリアのことだから、投票人名簿なども電子化されていて、コンピューターでチェックするのかな、と思っていたら紙の名簿だったのは意外でした。ですので、やろうと思えば複数回投票することも可能なわけです。もちろんそれは違法で罰金、罰則もありますが、そもそもが無記名投票ですから、取り締まることはほぼ不可能、だそう。まあわざわざそこまで頑張る人もいないか…。

投票用紙をくれた係員のオバサンに、「なにか質問は?」と聞かれたので、選挙とは関係ないけどなあ…と思いつつも、どうせだからと思って、

「あ、僕3ヶ月前に市民権取って、これが初の投票なんすよ~」って言ったら、Congratulations!と言ってめちゃくちゃ喜んでくれたのがなにやら嬉しかった。

投票用紙は、House of Representatives, Senate 用計二枚。こんな感じ。これをひとりひとり仕切られたブースに持っていって鉛筆で番号を振っていきます。

投票用紙。それにしても幅が…

House of Rep の投票用紙はまあいいとしても、Senateの投票用紙がめちゃくちゃ幅広で笑ってしまった。だって、投票ブースの幅に全く収まらないんですわ。

大小様々な政党があってそれを全部載せないといけないのでこうなるんだけど、それにしてもねえ~。

さて、投票。この国での第一回目の投票。なんかドキドキするなあ…。

誰に投票するかは、一番目と、「この党にはゼッタイ当選してほしくない!」というのはもう決まってましたが、それ以外はちょっと分からないので、先ほどもらった「お願い用紙」を参照に番号を振りました。

Senateは、1から12まで番号をふるなんてのはもう不可能だと諦め、1から6まで政党名の順位をつける方にしました。お願いチラシも、全てが1から6の投票例を示していたので、後者の方法で投票する人はあまりいないのだろうな。

記入した用紙を投票箱に入れて(Senateの投票用紙を折りたたむのが難儀だった…)、任務遂行!

これで罰金は取られない!

Democracy Sausage Sizzle

さて、さっきからいい匂いがしているなあ~、と思ってたのですが、投票所の教会の中庭で、ソーセージサンドイッチを作ってました。

これこそオーストラリア選挙名物の、Democracy Sausage 。民主主義ソーセージ!

これって、「選挙来てくれてありがとうね~、はいどうぞ!」とタダでくれるのかなあ、と思ってたのですが、間違ってました。

有料です…ここは$4でした。

え~、タダじゃないんだ…と少しガッカリしたのですが、それを作ってるのはその会場の教会の人たちなんですね。なのでその収益はチャリティーになる。

この教会はホームレスシェルターも運営しているので、ならばいいじゃないの!と$10を出し、「釣りはいらねえよ」、とカッコつけて買いました(2つ買って$2寄付してもよかったかなあ…腹減ってたし)。

できたてのソーセージロールはうまかった…。

まとめ

さて実際に投票に行ってきたわけですが、さすが義務としているだけあって、投票の仕方、誰でもどこでも投票できるシステム…など、よく考えられているなあと思いました。

投票していた一般市民もめんどくせえなあ、という感じもなく淡々と参加してましたし、敵対する候補者のボランティアもお互い普通に雑談してたりで、あまりギスギスしてなかった。

票のカウントもこんな複雑なシステムだから時間がかかるかなあ、と思ってましたが即日開票で、その日の夜遅くにはもうほとんどの結果が出ました。

ちなみに結果は、与党が惨敗し、9年ぶりにこれまで野党だった労働党が政権奪取を果たしました。さて、オーストラリアはこれからどうなるのでしょうかねえ。

個人的には、国籍を取ったばかりというタイミングで、この国の将来を変えるような大事な選挙に投票という形で参加し、久々の政権交代という大きなターニングポイントに当事者として関われた(たとえ小さなかたちとしても)、ということにとても感慨深いものを覚えました。やはり選挙って大事だな。

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