先日、晴れて(?)ホテルのナイトマネージャーの職を辞しました。
…といっても、ホテル自体を辞めたわけではなく、日勤マネージャー及びコンシェルジュに異動しました。もともとはこちらが本職だったので、「やっと戻れた~!」というのが正直な感想。
これまでは夜勤なんて、20ウン年のホテルキャリアで1,2度しかしたことがなかったので、当初はどうなることやら…、睡眠障害、不健康な生活に陥る、ゾンビになる、精神が不安定になる…といった不安が沢山でしたが、特にそういうこともなく1年少々勤め上げました(エラい!)。
ところで、ホテルの夜勤って何をやってるんでしょう?ホテルをよく利用する人でも、余り夜勤シフトの人と触れ合うことが少ないと思います。なんといっても、普通の人が寝ている時間に仕事をしているわけですから。
というわけで、脱出記念(?)ということで、ホテルの内情をお伝えしましょう!
勤務形態
オーストラリアでは、夜11時から翌朝7時までの8時間シフトが一般的です。いくら変な時間に働くといっても、8時間なので耐えられる範囲とは言えるかもしれませんね。
日曜祝日関係なく働く必要がある、というのは年中無休のほてるなので当たり前のことです。
人員
これはホテルの規模やグレードによって差異はありますが、キーワードは「必要最低限」
- ナイトマネージャー(現場責任者)
- フロントスタッフ(チェックイン・チェックアウトなど)
これらは最低限必要ですね。24時間ルームサービスがあるようなホテルなら、シェフやウェイターも必要ですが、最近はあらかじめ出来合いのを作っておいてフロントスタッフなどが部屋に届ける…というケースもあります。
もっと大きなホテルだと、セキュリティスタッフもいたりしますね。
うちのホテルは規模も小さいのでだいたい二人で回してます。
業務内容
もっと大きな24時間都市なら、深夜でも客の出入りがあったり、とんでもない時間に飛行機が発着したりすることもあるでしょうが、シドニーは基本夜が早い。なので、夜勤中は金曜・土曜のような週末を除きほとんど実際のゲストを見ません。
「じゃあ何やってるの?暇そうでいいね~。」なんて思われそうですが、意外とやること、あるんですよ。
経理事務
一日の業務を「締める」というやつですね。本日の売上とか、利益額とか、稼働率とか…やってる僕もよく分からん(それでいいのか!!)数字を集計してレポートにまとめ、ボスに提出します。
接客とは関係のない、地味~な仕事ですが、これをやらないとビジネスが回らないし、こうやって出したデータを基に宿泊料、予算、従業員数…などなどを決定していくので、大事な業務ではあります。
セキュリティ業務
定期的に館内を巡回し、何も異常がないかを確認。うちのホテルは新築なのでいいですが、歴史のあるホテルなんかだと、深夜に暗い廊下をてくてくと歩く…というのはあまりいい気分しないだろうなあ。「出る」ホテルもあるそうですしね。でも、どうせ誰も起きていないだろうとタカをくくって歩いている時に、いきなりゲストに行き当たるとお互い「うわ!!」となります。
非常階段や、火災報知システムがきちんと稼働しているか、なんてのも点検します。なんといってもゲストの安全はトッププライオリティですからね。
そして、火災報知器、鳴ることがあるんですよ…残念ながら。
そのうちほぼ9割は誤報だったり、シャワーやアイロンのスチームが敏感な報知器に引っかかって鳴ってしまう…というケースですが、たま~に、全館禁煙にも関わらず喫煙するヒトもいます。
他のホテルもそうだと思いますが、ホテルの火災対策はしっかりしています。客室のドアがきちんと閉まっていれば、2-3時間はそこから燃え広がらないですし、とりあえず非常階段に駆け込んで、扉を閉めればこれもかなりの長い時間安全です。
シティのホテルなら、ものの10分ほどで消防車が来ますしね。
なのでパニックする必要はありませんが、こと夜間に関していえば、対応するスタッフがほとんどいません!だって二人しかいなければ、丁寧に各フロアを巡ってメッセージを伝える…なんてことは不可能です。
もし夜中に報知器がなった場合は、アナウンスに従い、とりあえず非常階段を伝って外に出ることが大事かと…。
その他、たまに深夜になっても音楽を爆で鳴らしている部屋もあるので、そういう際は他のゲストの安眠を妨げないように、「え~、お楽しみのところ恐れ入りますが…」ということもします。ほとんどのゲストは協力的ですが、もしコワい人が出てきたら…うーむ。
ゲスト関係
シドニーの場合、大抵のゲストは遅くても0時までにチェックインしてしまいますが、それでも深夜に到着するゲストもいるので、普通にチェックイン業務をします。あと、ウォークインといって、予約無しで宿泊を希望するゲストもいるんで(特に週末は多い)、その際は料金を伝え、その場で予約を作ってチェックインさせます。酔っ払っていてろれつの回らないゲストをとりあえず部屋にほりこむ…。
その他も、追加のタオルを届けたり、追加のドリンクを部屋に届けたり、空調やテレビの不調を直したりといったこともします。部屋の不調は、こちらも専門ではないので、直せない場合は部屋を変わってもらいますね。
チェック、チェック…
オペレーションが静まった深夜はいろいろなことをチェックするのには最適の時間帯です。
ホテルは24時間営業なので、やはり忙しくやってると細かなミス(違う部屋に請求が行っている、みたいな)があちこちで出てしまったり、細かなタスクをやり忘れたり…という不具合が生じてしまいます。ゲストが気づく前、出発する前にそれらをチェックして修正するのも大事な仕事です。
「うわ、こんなミスしてら、ったくも~」
「え~、何がどうなったらこんな数字が出るの?ちょっと調査をしなくては…」
…なんてことをブツクサ言いながら地道にそんなミスを修正していると、夜勤はホントに縁の下の力持ちだなあ~、と思います。
朝の準備
そのように現在宿泊しているゲストのチェックを終えると、今日到着するゲストの準備をします。
VIPゲスト、アーリーチェックイン希望、誕生日・アニバーサリー…といった特別なゲストのレポートを出し、前もって部屋をアサインしたり、フラグを立てたりします。これも、その日のプロセスがなるべくスムーズにいくための準備です。
そうこうしていると意外と時間は早く経ち、朝の5時くらいになってきます。早起きのゲストがジムに行ったり、朝早いフライトに乗るゲストがチェックアウトして来たりするので、「おお、オレたちもあと少しで上がりだ~!」と気を入れ直し、やり忘れたりやり残したことがないかを再確認。
朝番のスタッフが揃ったところで引継ぎをして、めでたく業務終了!
朝日に目を射られながら帰途につくわけです。
フィジカル・メンタル面の影響は?
都合1年ちょい夜勤専属で働いてましたが、心身的な影響は幸いにしてほぼありませんでした。休みの日や空き時間を使って運動(ランニング)をしていたし、睡眠時間も必要最低限取れていたと思います。
ソーシャル面も、休みの日を使って友だちに会ったりしていたし、なんなら夜勤前の夕食会にも行ってました。
ただ、これには理由があって、僕が勤めていた期間の半分ほどはロックダウン、旅行規制などのせいでホテルはとても暇でした。これがとても忙しい状況で夜勤をしていたら、もっと疲労していたと思います。
また、僕はひとり暮らしなので家に帰れば誰にも干渉されず寝起きできたので、これも楽でした。家族などいたらそうも行かないでしょうしね。
比較的楽な状況下で夜勤シフトをしていたことも、ラッキーだったなあ、と思います。
まとめ
とにかくゲストと接触する機会が少ないので、何も起こらなければ平穏なシフトですが、逆に何かが起こると、なにせ深夜なので頼れる人がいない・少ないというのが問題。
自分たちの知恵を絞ってなんとか解決策を出さなければなりません。この辺が醍醐味というか何というか…。
ホテルのフロント、なんていうとちょっと華やかなイメージがありますが、夜勤に至ってはその正反対!スポットライトが当たることはまずありません。
僕はもともとがコンシェルジュだったので、初めはこのギャップに戸惑いました。でも、夜勤業務というのはかなりスペシャルな面があるのでそれを会得できたのはとてもいい経験になりました。
端的に言うと、ホテルの夜勤ができればまずこの業界では食いっぱぐれないだろうなあ…(スペシャリストだし、そもそも人気ないし!)
なんかこのままズルズルと夜勤生活になじんでしまったら社会復帰(?)できなくなるなあ~、と思い始めていたところの異動だったので、ちょうど潮時でした。
…なんて書いたけど、遅かれ早かれ誰かの穴埋めで突発的に夜勤シフトをお願いされるんだろうなあ…。
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