日本には、山の手線があり、大阪環状線がある。
シドニーにも、シティ・サークルという路線がある。
運行形態
とはいっても、実はこのシティ・サークル、看板に偽りあり、です。
線路はサークルにはなっていないんですな、これが。
どちらかというと、しゃもじ型のような路線で、セントラル駅が入口と出口になっている。
路線図を見ていただければわかりやすいかな?ピンクでハイライトした駅がシティ・サークルの各駅となっています。

山手線のようにぐるぐると回る電車は一本も走っていない。
なので時々どちらの方角に乗ればいいのか少し迷うけど、まあしょせんそんなに大きなサークルでもないので、落ち着いて案内を見れば大丈夫。各駅の距離もかなり短く、隣の駅に行くくらいなら歩いたほうが早いことも。
ランナーの私が気張ってこのルートを走れば、30分で一周できると思うなあ…信号待ち時間を除けば。
ともあれ、このシドニー環状線についてまとめてみました。
歴史
シティ・サークル以前は、鉄道は「シドニー駅」が終点となっていて、この駅は1855年に開業しました。ただ、駅の位置は現在のセントラル駅とは少し離れていたようです。
現在の位置に駅ができたのは1906年のことで、その当時は市内を走る鉄道はなく、代わりに路面電車が走っていました。
その後、市街地を走る環状線、つまりシティ・サークル線の計画がたてられ、1926年にミュージアム、セントジェームスの2駅が開業。
1932年には、シドニーハーバーブリッジの建設に併せてタウンホール、ウィンヤード駅が開業しました。
最後のサーキュラーキー駅は、第二次世界大戦の影響もあり工事が中断され、1956年に開業。これでシティ・サークル線が完成しました。
セントラル、サーキュラーキー駅以外は地下路線となっています。
では、この路線の各駅を紹介してみましょう。
各駅の紹介
セントラル
いわずとしれたシドニー最大の駅です。堂々とした石造りの格調ある建物で、時計塔が目に付きます。NSW州地方都市、メルボルン、はてはパースやダーウィンまで行く長距離列車の発着駅でもあり、頭端式(行き止まりになっている)ホームがずらりと並んでいて、旅情を感じさせます。

全部で25番線まであり、地下ホームもあります。
そんなどでかい駅ですが、やや町外れに位置しているので、ピークアワー以外は少しガランとした雰囲気になります。また、チャイナタウンや大学が近いので、学生、そしてアジア系の人が多いですね。周りに大きなオフィスビル等は少ないので、どちらかというと乗換駅として忙しい、という感じです。
最近、Sydney Metro という新しい鉄道路建設のため、絶賛工事中でややごちゃごちゃしておりますが、モダンなデザインの新しいコンコースが作られ、また様相が変わりそうですね。
ミュージアム
セントラル駅を出た電車は地下に入り、ミュージアム駅に向かいます。
駅の名前の由来は、もちろん近くにあるオーストラリアミュージアム(博物館)です。
地下駅なので、駅舎というのもないですが、ハイドパークに面したメイン入口の建物は、大戦間に流行ったアールデコ調のデザインで、レトロモダン、といった感じです。
そして、この駅の見どころは、なんといってもプラットフォームの広告です。時代がかったレトロデザインになっていて、見ていて飽きません。現存している会社や商品のものもあるので、もしかしたらその会社はちゃんと広告費を払っているのかな?

その他、ちょっと暗い照明、ロンドンの地下鉄のような駅名標、タイル張りの壁などのデザインはおそらく開業当時から変わっていないはずです。ここで電車を待っていると、あれ、今オレはどこにいるのだろう?と、タイムスリップしたような不思議な気持ちになります。
セントジェームス
さて、次の駅はセントジェームス。近くにあるセントジェームス教会が駅名の由来です。この駅も地下駅で、ミュージアム駅と似たデザイン。緑色系の壁面タイルが目に鮮やかです。
そして、なぜかホームがやたらと広い。
実はこの駅、別路線を建設する計画があったため、もとは4番線までありました。しかしその路線は作られずに終わったため、中央部は埋められていてだだっ広くなっているのです。
その建設予定だったトンネルはまだ一部が残っていて、以前は見学会もあったそうな。
ハイドパークに面した駅入り口には、おしゃれなネオンサインの広告があります。

Chateau Tanunda という名前のブランデーの広告ということですが、史跡ということで残されています。名前のせいか、今度はパリっぽく見えますね。
サーキュラーキー
前後の線路は地下を走っているのですが、ここで線路は高架になり、シドニーハーバーが目に入ってきます。いままでの薄暗い地下鉄がいきなり明るい地上に出る、このギャップが面白いですね。そして電車はすぐにサーキュラーキー駅に到着。

プラットフォームの上にはさらに道路が走っているので頭上は閉塞感があるのですが、そのぶんサイドは開放的で、ここからはオペラハウスやハーバーブリッジ、忙しく行き交っているフェリーが見えます。
実はプラットフォームからの眺めは隠れた絶景で、都会の駅でこれだけ海に近い場所にあるというのも、かなり珍しい。
近くにはオペラハウス、ロックス、現代美術館といった観光名所もあり、フェリー、バス、そしてライトレールのターミナルにもなっているので、かなり乗降客が多いです。
そうか、シドニーの公共交通機関すべての種類が一堂に会している駅は、もしかしたらここだけかな?
この駅が開業したのは戦後ですが、デザインはアールデコ調の直線的で、幅広い駅舎が特徴的です。外壁のややピンクがかった色の石が明るいトーンを出しています。
ウィンヤード駅
サーキュラーキー駅を出た電車はまた地下に潜り、ウィンヤード駅へ。ここはビジネス街の真ん中にある駅なので、ピークアワーはかなり忙しくなります。また、ハーバーブリッジを渡ってシドニーの北側に行く路線への乗換駅にもなっています。
さて、この駅で見なくてはならないアートワークは、これです。

これは、実際に使われていたエスカレーターを使ったアートワークなんですよ。ステップが木製なんですよね。このエスカーレーター、割合最近まで(よく覚えていませんが、2010年代までは現役だったような)使われていて、私もこの上をどかどか踏み鳴らして上下していました。
駅の上には、Transport House というアートデコ様式の緑色の外壁が目を引くビルが建っています。名前のように、鉄道関係のオフィスが多く入っているようです。
タウンホール
さて、シティ・サークル最後の駅が、タウンホール。その名の通り、タウンホール(市庁舎)の真下にある駅です。
完全に地下駅なので、地上には目立った駅舎というものはありませんが、周りにはタウンホール、セント・アンドリュース大聖堂、クイーンビクトリアビルディングといった風格のある建物があります。
駅の真上にはライトレールの停留所もあり、このセクションは車両通行止めになっているので広々とした雰囲気になりました。

その割にはプラットフォームやコンコースのスペースがそれほど広くないので、ピークアワーにはシドニーの鉄道にしては珍しく、駅構内を真っ直ぐ歩くのが少し大変なくらい混み合います。
そして線路の配置がちょっと複雑なので、一番迷いやすい駅なのではないでしょうか。
電車はこの駅を出ると、やがて地上に出て、セントラル駅に戻ってきます。最初に触れた通り、この後電車は郊外に行く路線に入るので、ミュージアム駅には向かいません。
まとめ
以上、シドニーの市街地をぐるりと周るシティ・サークルについてまとめてみました。ちなみに日本で最初の地下鉄である、現在の東京メトロ銀座線が開業したのが1927年なので、ほぼ同時期ですね。
シドニー在住、訪問者関わらず利用することの多い路線ですが、忙しく通り過ぎるのではなく、たまにはじっくりと駅のデザインや歴史に注目しても面白いですね。
コメント